言語種別 日本語
発表タイトル 炎症性腸疾患における重症化・難治化予測に関する血小板関連新規バイオマーカーの探索
会議名 第111回日本消化器病学会総会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(公募)
発表者・共同発表者◎八木 直人, 富山 尚, 本澤 有介, 伊藤 友佳, 佐野 泰樹, 齊藤 詠子, 深田 憲将, 長沼 誠
発表年月日 2025/04/26
開催地
(都市, 国名)
東京 京王プラザホテル
開催期間 2025/04/24~2025/04/26
学会抄録 ウェブ
概要 【目的】炎症性腸疾患(IBD)は消化管に原因不明の慢性炎症を引き起こし,各種治療にも関わらず重症例・難治例が存在する.IBDの病態と血小板増多症,活性化との関連の重要性は以前より報告されているが,両疾患における血小板単球複合体(PMC)と内視鏡重症度,腸管局所の血小板活性化との関連は明らかではない.【方法】1)潰血小板活性化表面マーカーであるCD62P,sCD62P等の可溶性因子,PMC(CD62P+CD14+)と潰瘍性性大腸炎(UC)における内視鏡的重症度(MES),治療前後の推移について検討した.2)UC患者の手術検体を用いて,PMC形成の有無を蛍光免疫染色し,定量化した.【結果】UC患者では健常対照者と比較して血小板上のCD62P発現が有意に上昇していた(P<0.05).CD62P発現はMES3の患者でMES≤2の患者よりも有意に高値を示した(P<0.001).一方,血清sCD62P濃度はMES0の患者でMES≥1の患者より有意に高値であった(P<0.01).他の活性化マーカーやサイトカインはMESとの相関を示さなかった.PMCの割合はMES3の患者でMES≤2の患者より有意に高値を示した(P<0.05).腸管粘膜の検討では,PMCは主として粘膜欠損部位に集積しており,その数は粘膜損傷(粘膜障害なし,びらん,潰瘍)の深度に応じて有意に増加することが確認された.(各2群間で粘膜障害なし−びらん(P=0.0027),びらん−潰瘍(P<0.0001),粘膜障害なし−潰瘍(P<0.0001)).治療により内視鏡的粘膜寛解に至った患者では,3ヶ月後に末梢血中のPMCの有意な減少を認めたが(P<0.05),CD62PとsCD62Pは変化しなかった.【結論】UC患者の腸粘膜組織におけるPMCの形成を確認し,さらにPMCの個数と腸管炎症の組織学的重症度と正の相関を示すことを明らかにした.この結果及び末梢血中のPMCの割合と内視鏡的重症度が正の相関にあることから,PMCは腸管炎症を反映する新たなバイオマーカーとなることが示唆された.またPMCが単に末梢血中で形成されるだけでなく,損傷粘膜局所において炎症の進展に積極的に関与している可能性が示唆された.