言語種別 日本語
発表タイトル アルコール性肝硬変患者の非代償性イベント発生時におけるCT画像による体組成評価は予後の指標となり得る
会議名 第61回 日本肝臓学会総会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(公募)
発表者・共同発表者◎山敷宣代, 下田慎治, 長沼誠
発表年月日 2025/06/05
開催地
(都市, 国名)
ホテルニューオータニ 東京 (東京千代田区)
概要 【目的】アルコール性肝疾患(ALD)における非代償性イベント後の予後に,肝予備能や飲酒行動,BMI,サルコペニアが関与する.一方腹部CT画像による体組成分析は,画像バイオマーカーとしての有用性が報告される.今回CT画像解析アプリケーションを用いて体組成と予後との関連を検討した.
【方法】2016年~2024年3月に肝細胞癌を除く肝関連イベントで初回入院し,入院日の血液検査所見と,前後14日以内に撮像したCTの画像データのあるALD 104例が対象.Synapse Vincent(富士フィルム)2D腹部脂肪測定アプリケーションを使用し,第3腰椎レベルの筋肉量,内臓脂肪面積,皮下脂肪面積を其々身長の2乗で除したSMI,VATI,SATI(cm2/m2)を求めた.全死亡,肝関連死,1年以内の肝関連イベント発生に寄与する因子につき,Cox比例ハザードモデル,競合リスクモデルを用い,単変量および多変量解析を行った.
【成績】背景因子は年齢54±11歳,男性74(71%),BMI 男23.3± 4.2;女21.8± 4.8kg/m2,SMI 男46.0 ± 9.2;女40.4 ± 8.1,VATI 男37.5± 21.8;女35.9 ± 18.8,SATI 男24.6±20.3;女29.5 ± 20.6.入院目的は腹水43(41%),ACLF 12(11%),Alcoholic hepatitis 13(12%),消化管出血10(9%),肝性脳症6(5%),その他20(19%).BMIはSATI,VATI,SMIと相関する(rho=0.63,p<0.01;0.46,<0.01;0.63,<0.01)が,腹水との相関は無かった.SATIの低値は腹水と相関を認めた(ρ=-0.28,p=.003).観察期間中央値1.5(0.1 -6.8)年の死亡37例(うち肝関連死27),1年以内の肝関連イベントによる再入院は39例(腹水13,アルコール性肝炎2,消化管出血7,肝性脳症6,その他11).年齢,性別,BMI,腹水有無,MELDスコアで調整した多変量解析では,SMI高値(連続変数)は全死亡リスク低下(HR 0.94(95%CI:0.89 - 0.98),p=0.018),および肝関連死亡リスク低下(SHR 0.94(0.89 - 0.99),p=0.031)の寄与因子であった.1年以内の肝関連イベント入院について,単変量解析ではSATI低値,VATI低値の関与が示唆されたが,多変量解析ではVATI 低値(HR 2.19(1.07 - 4.47),p=0.031)のみが有意であった.
【考案】ALD症例への入院時CTによる体組成分析は予後予測に有用である可能性が示唆された.
【結語】SMIはALD患者の非代償性イベント後の予後に関連し,低SATIは腹水との関連,低VATIは1年以内の肝関連イベント再発に関連する.