言語種別 日本語
発表タイトル 片麻痺で発症した進行性核上性麻痺の一剖検例
会議名 第50回日本脳卒中学会学術集会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎中村正孝, 隠岐光彬, 村上綾, 國枝武伸, 高橋牧郎, 藥師寺祐介
発表年月日 2025/03/06
開催地
(都市, 国名)
大阪
開催期間 2025/03/06~2025/03/08
概要 【目的】片麻痺で発症した進行性核上性麻痺(PSP)患者の病変部位を解明する。【方法】 69歳男性が、右足を引きずるような歩行障害及び右手で箸を落とすなど右半身の動かしにくさを訴えた。72歳時に当科を受診した際右片麻痺のみであったが、数ヶ月後に易転倒性が出現し、精査目的に入院した。神経学的には、MMT4レベルの右片麻痺に加え、姿勢反射障害、すくみ足、頸部優位の筋固縮、左右差のない四肢の寡動、核上性眼球運動障害、認知機能障害を認めたが、失行はなかった。頭部MRIで中脳被蓋の萎縮が認められ、PSPと診断した。高血圧及び喫煙歴があり、右片麻痺は画像で検出されない血管障害の可能性も考慮した。徐々に転倒頻度が増加し、嚥下障害も出現し、73歳で肺炎により永眠した。【結果】固定後脳重は1160g。肉眼的に両側前頭葉が軽度萎縮し、視床下核と小脳歯状核は萎縮しており、黒質の褪色が見られた。血管障害を示唆する軟化巣はみとめなかった。組織学的に、青班核、黒質、視床下核、淡蒼球、小脳歯状核にグリオーシス変化を認め、これらの部位を中心にGlobose型神経原線維変化やtuft-shaped astrocytes(TSA)が見られた。中心前回の神経細胞脱落に左右差はなかったが、TSAは統計学的に有意に左側に多く認められた。皮質脊髄路に左右差はなく、脊髄前角細胞の細胞脱落はなかった。【考察】臨床で疑われた片麻痺の原因となりうる血管障害の病巣は、病理学的にも確認できなかった。皮質脊髄路や前角細胞の異常はなく、運動野におけるタウ病理に左右差が見られたことから、片麻痺は運動野の病理変化と関連している可能性が示唆された。【結語】片麻痺の原因として、運動皮質におけるTSAの蓄積が主原因である可能性が示唆された。