言語種別 日本語
発表タイトル 慢性膵炎における膵癌発癌リスク:疫学データを裏付ける病理・遺伝子解析による検討
会議名 第65回日本膵臓学会大会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(公募)
発表者・共同発表者◎丸尾基展,池浦司,岡林功,池田正俊,高折綾香,伊藤嵩志,中丸洸,桝田昌隆,中山新士,長沼誠
発表年月日 2025/07/25
開催地
(都市, 国名)
ホテルニューオータニ 東京 (東京千代田区)
開催期間 2025/07/25~2025/07/26
学会抄録 web
概要 【背景/目的】慢性膵炎(CP)患者における膵癌(PDAC)
の発生は報告されているが,その詳細な病因は不明な
点が多い.本研究は,CP 患者におけるPDAC の標準化
発生率(SIR)を算出すること,CP 患者から切除した
膵臓における膵上皮内新生物(PanIN)および癌関連遺
伝子変異の有病率を調査する.【方法】疫学的解析では,
慢性膵炎臨床診断基準に基づき当院で診断されたCP
患者122 人を対象に,国立がん研究センターが報告し
たPDAC の罹患率を用いてSIR を算出した.病理学的
解析では,14 人のCP 患者の切除膵におけるPanIN
の有病率を評価した.遺伝子解析では,CP 患者6 人の
ホルマリン固定パラフィン包埋から抽出したDNA を
Ion AmpliSeq Cancer Hot Spot panel v2 を用いてホッ
トスポット変異解析を行った.【結果】122 例中4 例
(3.3%)が中央値62 ヵ月の追跡期間中にPDAC を発
症し,CP 患者のコホートでは,PDAC のSIR が上昇し
ていた(11.3[95%CI:8.19-10.53]).病理学的には,CP
患者14 人中8 人(57%)が低悪性度PanIN を認めた.
遺伝子解析では,STK11(100%),TP53(83%),SMAD
4(67%)のドライバー変異が高頻度に検出されたが,
KRAS とCDKN2A/p16 の変異は認めなかった.【結
論】CP 患者はPDAC を発症するリスクが高く,特に
TP53 とSMAD4 の変異がみられた.慢性炎症に関連
する膵癌発生の機序は一般的な膵癌発生の経路とは異
なる可能性が示唆され,CP における膵癌発生メカニ
ズムの理解を深める一助となると考えられる.